申込書

女性力と価値創造産業へのチャレンジ

JATA×JWTC第一回勉強会
日本旅行業協会 菊間潤吾会長講演採録

観光ジャーナリスト 千葉千枝子

去る2013年7月3日、JATA菊間潤吾会長を講師に「女性力と価値創造産業へのチャレンジ」と題した勉強会を催しました。80名を超す聴講者が、会場のJATA会議室(東京・霞ヶ関)をうめつくしました。

日本旅行業協会 菊間潤吾会長講演採録

 大勢の聴講者を前に冒頭、「これほど緊張することはない」と笑いを誘った菊間氏。ですが会場には女性だけでなく、男性も3割弱ほど臨席したことに、驚きを隠せない様子です。
 これからの業界における女性の進出に大きく期待し応援すると力説する一方で、単なる懇親の場、情報共有にとどまらず、外へ向けて発信できる団体になってくれたら嬉しいと、共催者である日本旅行業女性の会のメンバーへもメッセージを寄せました。
 女性のさらなる活用や働きやすい職場環境をつくるため、JATAは今後も、提言を積極的に発信したく、また(提言となるような)成果を得られる場に、今回の合同勉強会を継続性をもって取り組みたいと、意欲を述べられました。


 女性が働きやすい環境を「提言」できる場へ JATA菊間会長 講演採録

 2013年度は、10年に一度といわれる旅行業法改正の検討年でもあります。現在の旅行業法は、家の外壁に例えるならシミや汚れが目立ってきた状態。これをどう対処するか、ただの塗り替えではなく、新しい家を建て直すような気概で取り組みたい、と考えています。改正案については、JATAの組織内に特別検討委員会を立ち上げて、観光庁へと提言をしていきます。環境認識をしっかり行って、JATA加盟各社を守り、収益性向上も念頭に置きつつ、積極的に申し入れをしていく構えです。
 とはいえ現実には、消費者庁との兼ね合いがあるため、業法や約款の改正は多難です。これまでは監督省庁とJATAとの間で、こうした議論が重ねられてきましたが、消費者庁が創設されて以降、容易な改正が難しくなっています。
 かつて、募集型企画旅行(パッケージツアー)のキャンセルチャージについて提言をしましたが、観光庁には理解を示してもらえたものの、消費者庁が首を縦に振りません。そもそも現行の取消料規定自体が妥当であるのか、ルールそのものにも消費者庁が言及しており、これが日本特有のものであると実感させられます。
 OTA (オンライントラベルエージェント)の動きが、今、世界中で話題になっています。そうした時代的な背景から、海外を見渡すと、業法や約款に捉われずに伸びている国もあります。例えばオーストラリアでは、旅行業法廃止の動きがありました。ヨーロッパでは、手配旅行についてのしばりを失くして、パッケージツアーだけを法規制しようとする議論にあります。
 グローバルスタンダードが叫ばれるなか、これから先の10年を見据えて、日本の旅行業法がどうあるべきか、消費者にとって安心・安全な旅をつくることを真剣に考えなくてはいけないときにきています。旅程保証なども含めて、どのように改善していくか、今後も検討を重ねるつもりです。


 女性力と価値創造産業へのチャレンジ JATA菊間会長 講演採録

 われわれは旅行代理店という表現をあらため、旅行会社であることを前面に押し出してきました。しかし一部では、代理店的な発想が未だ根強いように感じます。
 今後は「価値創造産業」としての考え方を醸成させる必要があると、強く認識しています。環境の変化が著しい時代にあって、必要とされるのは女性の感性です。マネージメントの層に女性がもっと進出して、中核を担わないとなりません。先進国をみると、いかに女性管理職の比率が高いことか、トップの多くは女性です。
 
そもそも、一つの業が成り立つまでの過程では男性主導も珍しくありませんが、成熟期を迎え、これからは女性が表舞台に立つことが自然だと考えます。
 また、業態によって多少の差はあるでしょうが、われわれはサービス業からホスピタリティ産業へと進化、変化をしていかなければならないときです。代理店的発想から脱却していく必要があります。具体的には、商品づくりの現場でもいえます。例えば、新路線の開設があったから、政府観光局の重点プロモーションだから、という受け皿的、便乗的な発想の仕方ではなく、自らがマーケットを創出するように方向転換をしなくてはなりません。存在感を示していく必要があるのです。
 旅のプロとしての知識の習得、スキルアップも重要です。インターネットで情報が無限に収集できる時代にあって、旅行会社社員の知識不足が、ひいては旅行会社離れを加速させているといっても過言ではなく、JATAとしては会員社員の知識向上に役立つ場の提供、準備も始めています。白地図を広げて一つひとつを塗りつぶす、そのお手伝いを、これまで旅行会社が行ってきましたが、今後は新しいディスティネーションを開拓するだけでなく、深堀りしていくことを考えなくてはなりません。
 旅行業界のキーワードは付加価値であり差別化と、よく言われますが、究極の付加価値は心理的な面にあり、“てんこ盛り”のツアー造成とは違います。無駄を削ぎ落とし、よいものだけを磨いていく、感性を大切にした仕事が求められているのです。


 旅行業は女性にあった職業 胆力をつける JATA菊間会長 講演採録

 JATA会長に就任して1年、最大のトピックは政策提言委員会を立ち上げたことです。18年間、JATAにたずさわってきましたが、事業を推進するような活力があまり感じられませんでした。各社が横断的に結ばれ、意見を出し合い、自らが考えて行動しなければいけない、我々から変えていくという意気で刷新をはかりました。
 具体的には、会報誌「じゃたこみ」の月刊化や東北復興支援1000人プロジェクト、訪日認証制度やチームヨーロッパというプロジェクトを立ち上げ、株式会社ジャタに新規事業を、さらには中小の会員旅行会社若手社員のためのスキルアップ研修にeラーニングを導入するなど、整備を急いでいます。
 優秀な人材の獲得を今後、どのようにはかるか。主要大学と合同就職セミナーを行う等の計画を、早朝の三役会(JATA副会長2名との定期会合)で議論しています。
 筆記試験で選ぶと、女性が実に優秀です。そこで面接では「結婚して、子供ができても仕事を続けることができますか」と尋ねますが、これからは「マネージメントの立場になるまでやっていけるか」という点も問いていきます。
 女性で、本気で仕事をやりたい人に旅行業は向いています。今後は、職場での女性の役割も増えます。JWTCと今後も協働して、セミナー等を継続してやっていきたいと考えています。そもそも若手の女性社員が、経営トップの話を聞けるチャンスもあまりない。とはいえ女性の胆力(動じない精神力)を、どうやってつけていくかも課題です。
 さて、来年2014年は海外旅行が自由化されてから50年の節目の年です。日本における本当の文明開化は、海外へ自由に行けるようになったことだと思っています。海外旅行がもたらした大切なもの、旅をする意義を広く認知してもらえるよう、我々は強く発信していくつもりです。

     ※本件についてのお問い合わせは、JWTC広報戦略部・千葉 info@longstaystyle.com まで




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