JWTC&JATA 第10回勉強会

2018年5月15日(火) 参加者65名 懇親会36名

ミキ・ツーリストのアジアへの挑戦

株式会社ミキ・ツーリスト  代表取締役社長 檀原 徹典氏講演

第10回目を迎えたJWTC&JATA勉強会では、株式会社ミキ・ツーリストの代表取締役社長 壇原 徹典様を講師にお迎えして、ミキ・ツーリストの設立、旅行業界を取り巻く環境の変化に対応するためのアジア市場進出への戦略などについてご講演いただきました。

また、女性の働き方についても、海外は実力主義で男女差別が無いが、男女ともに残業もなく有休休暇を全て消化するのが普通であるため仕事以外の予定がたてやすく、女性も働きやすいのではないか、とのご意見を伺いました。

ヨーロッパで過ごされた20数年のご経験も踏まえたグローバルな視点での講演に、参加者一同新鮮な思いで聞き入りました。

1987年にミキ・ツーリスト東京支社に入社、翌年からマドリッド、ロンドン、マドリッドと2010年までヨーロッパで22年間ご活躍をされました。その後2011年に同社 代表取締役にご就任、グループ・ミキ・ホールディング経営最高責任者(CEO)を兼務され現在に至ります。
社外では、一般社団法人日本旅行業協会(JATA) 運営委員、観光産業健康保険組合理事を務めていらっしゃいます。

gyoto 株式会社ミキ・ツーリストについて

1967年に「日本人の手配による日本人旅行客のオペレーター」としてロンドンに会社を設立、日本ではその2年前の1965年に海外渡航自由化が実施されたため、日本人のアテンドへの需要増を見込んだ設立であった。現在は、欧州16カ国18都市にて600名の従業員が手配業務を行い、日本国内250名と、アジア6カ国9都市300名の従業員が法人営業に携わっている。

gyoto ツアーオペレーターの役割

ホテル、レストラン、交通、ガイド等、旅行に伴う全ての手配を行う。市場の需要とサプライヤーサイドの供給の調整をしながら、商材の仕入れ・ツアーの造成をして旅行会社に販売をするのが仕事。
1995年前後のインターネットの登場により、誰もが情報を入手しやすくなり仕事の形態が変わった。例えば視察旅行では、以前は日本からヨーロッパの視察先を探す術はなく、おのずから旅行会社経由で現地に問い合わせをしなければならなかったが、現在はインターネットの普及により情報入手が容易となり、それに伴いツアーオペレーターの存在価値がインターネット普及前ほどではなくなった。
しかし今の時代にも通ずるツアーオペレーターの存在価値を模索、ビジネスの拡大を目指す戦略を語られた。

①アジア市場への進出
アジアでは富裕層の増に伴う旅行需要の増加している。オペレーションのボリュームの急増に対処するため、Shared Service Centerを設立し旅行手配の共通業務に一括して対応。2018年現在、アジア市場での売上高は日本市場に匹敵する。アジアでは、韓国、中国(3都市)、香港、台湾、タイ、マレーシア、インドネシアに営業拠点を置き、急増するアジアからの需要に対応している。

②オンライン市場への進出
サプライヤーとの販売チャンネルのオンライン接続を通じてオンライン市場へ進出。個性ある魅力的なFIT商材を流通させ更なる成長を目指す。
ヨーロッパのみの取扱いであるが、日本人の要求に応えて満足させることができる商材を流通させれば、世界中に対応が可能となる。

手配デスティネーション・商材の拡大
手配地域を北・南米、オセアニア、中東に拡大 (ペルーやハワイ含む)
大型客船の日本発着クルーズ
販売商材を拡大することによりビジネスを拡大する


gyoto 外部環境の変化・世界の観光産業全体の持続成長、隣国の旅行市場

今後20年の海外渡航人口は倍増する見込みであり(年5%増)、その増加率は世界経済成長率(年3%増)より高い。旅行者の国籍は欧米からアジアにシフトし、2030年には全旅行者数の3割がアジアからとなり、旅行手配方法もネット経由にシフトする見込みである。
日本の海外渡航者数は過去最高の2012年1,840万人以来、1,700万人台で推移している。また、主要旅行会社の販売するパッケージ商品の取扱額は直近3年で20%近く減少している。
一方韓国人の海外旅行者は過去5年間で80%近く増加し2,600万人を突破、韓国の旅行会社の売り上げは倍増した。日本人のパスポート所有者は人口の25%以下であるが、韓国は50%以上の国民がパスポートを所有している。
韓国では20歳から40歳の層が海外渡航を牽引しており、20歳以下の海外渡航者数も日本の倍以上である。また、台湾でも海外渡航者が直近5年間で50%近く増加し、1,500万人を突破した。近隣国が急速にグローバル化を遂げている中、他国を知らない国が勝ち残ることができるのか憂慮する。

旅行業は「世界を知ること」「遊び」を助ける産業ともいえる。例えば台湾のLION TOURという旅行会社では、カルチャーセンター開設・スポーツ大会開催等により、旅行につながるきっかけ作りに取組んでいる。
「婚約指輪は給料の3か月分」や「バレンタインにはチョコレートを贈る」などは、日本の宝石業界やお菓子メーカーが造成したブームといわれているが、昨今の韓国では旅行会社が「定年退職をした両親に旅行を贈ろう」とのブーム作りに取組んでいる。
このようなブーム作りをはじめとして、海外渡航者数が伸び悩んでいる日本の旅行業こそ、「どう変わろうとするか」「どのような需要を造りだすのか」など新しい取組みが必要であると説かれた。
アジア全体を商圏として取組み、世界一のランドオペレーターを目指す壇原氏の力説にそれぞれの会社の立場を踏まえながら、多くを学び取った勉強会となりました。

勉強会後の懇親会では、講師の壇原氏も参加され、会員もビジターの方々も和気あいあいと仕事の話、旅の話で盛り上がりました。参加者の中には今までJWTC活動を知らなかったと、早速入会を決めていただいた方もいて、会としては嬉しい懇親会となりました。

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